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トートバッグは佐野研二郎デザインではなかった!この騒動はデザイン業界の待遇の悪さが招いたかも知れない

      2015/11/05

五輪ロゴ騒動で渦中にある佐野研二郎氏ですが、それ以上に大きな問題になってしまっているのが佐野氏が手がけたサントリートートバッグデザインの盗用問題。

このトートバッグは疑惑段階である五輪ロゴとは違い、完全な黒で佐野氏は一部の賞品を回収しています。

8月14日に佐野氏はこの騒動に対して声明を出しました。以下は佐野氏が設立した会社MR DESIGN公式サイトのトップページに掲載されたものを一部抜粋したものです。

今回のトートバッグの企画では、まずは私の方で、ビーチやトラベルという方向性で夏を連想させる複数のコンセプトを打ち立てました。
次に、そのコンセプトにしたがって各デザイナーにデザインや素材を作成してもらい、私の指示に基づいてラフデザインを含めて、約60個のデザインをレイアウトする作業を行ってもらいました。その一連の過程においてスタッフの者から特に報告が無かったこともあり、私としては渡されたデザインが第三者のデザインをトレースしていたものとは想像すらしていませんでした。
しかし、その後ご指摘を受け、社内で改めて事実関係を調査した結果、デザインの一部に関して第三者のデザインをトレースしていた事が判明いたしました。

・・・

何ら言い訳にはなりませんが、今回の事態は、社内での連絡体制が上手く機能しておらず、私自身のプロとしての甘さ、そしてスタッフ教育が不十分だったことに起因するものと認識しております。
当然のことながら、代表である私自身としても然るべき責任は痛感しており、このような結果を招いてしまった事を厳しく受け止めております。

つまり、トートバッグに関しては佐野氏は監修(ディレクション)のみをしていて、実際のデザイン業務はスタッフが行ったということです。そして、ディレクター・責任者としての不手際を謝罪しています。

「デザインしたのは本当に佐野氏ではないのか?」という疑問

デザイン業界を知らない人からしたら、「他のデザイナーが作った事にして責任を逃れようとしている」と思うかもしれません。

でも、実際は佐野氏の主張どおりで、ほとんどのデザイン会社はディレクター・アートディレクターがいて、重要度が低い案件は指示だけ出してデザインは別のスタッフがやる事が多いです(そうしなければ仕事が回りませんからね)。

「佐野氏がデザインしてないのに”佐野研二郎デザイン”と称するのは詐欺だ。」と言う人もいると思いますが、デザイン・クリエイティブ業界ではディレクターの名前が代表として出るのが一般的です。例えば、映画でも監督の名前が大々的に取上げられ美術スタッフ(デザイナー)の名前は表に出ません。

なので佐野氏の発言には嘘は無いと思います。もちろん、佐野氏自身が述べているように責任が佐野氏自身にあるのは間違いありません。

五輪ロゴもスタッフが盗用したのでは?

トートバッグがスタッフによるデザインとなると、「五輪ロゴもスタッフが盗用したのでは?」という新たな疑問が浮かぶ人もいるでしょう。

これは可能性としてはゼロに等しいでしょうね。五輪は国家プロジェクトであり佐野氏自身にとっても人生を賭けた一大勝負です。そういう仕事を指示だけ出してデザインはスタッフにやらせるなんてことはありえません。デザイナーならば喉から手が出るくらいやりたい仕事のはずですから。

一般人にデザインが理解されない事がこういった問題を生み出すのかも知れない

あなたは今回の五輪ロゴを見てどう思いましたか?

  • 「こんな単純な図形、自分でも簡単に作れるわ」
  • 「簡単に真似できそうなものに金出したくないな」
  • 「シンプル過ぎて手抜きっぽく見える」

と思った人は少なくないはずです。
シンプルであればあるほど『手抜き』だと思われる傾向があるんですよね。実際私もデザインを学び始めた当初は「何故こんなシンプルなデザインで金が取れるんだろう?」と思っていました。

デザインは引き算なんですよね。一般人はあれこれ付け加えたほうが「手間をかけてる」と思うかもしれませんが、プロはそこからワンステップ進んで「不要なものを削っていく」んです。つまりシンプルに見えるものほど手間がかかっている場合も多いということなんです。

ちなみにあなたはデザイナーにどんなイメージを持っていますか?

  • お洒落
  • 華やか
  • 良い家で暮してそう

業界を知らない人ならこういったイメージを持つ人が多いと思います。でも、それは大きな間違いなんです。転職サイトDUDAの「平均年収/生涯賃金(100職種別) 2014年版」にはイメージとはかけ離れた事実が書かれています。

職種 平均年収 順位 生涯賃金
グラフィックデザイナー/イラストレーター 328万円 91位/100職種中 1億3515万円

まさかのワースト10入りなんですよね。しかも、デザイン業界は徹夜仕事も多く、小さい会社であれば残業代も出ません。

何故こんなに待遇が悪いかというと、先ほど言ったようにデザインの価値を理解できるクライアント(一般人)が少ないからなんですよね。クライアントはデザインに対する理解が無いのでお金を出そうとしません。となれば安さで競うしか無くなってしまいますよね。安く受注すれば当然デザイナーの給与は少なくなります。

そして、デザイナーは給与を増やす為に仕事量を増やす必要が出てきます。会社も何とかして利益を出さないとならないので多くの仕事を受注しデザイナーに振ります。その結果、悪魔の囁きに負け、今回の騒動のように安易にパクって楽をしようとする問題が発生するわけです。

今回の騒動がもたらした1つの功績

今回の騒動でネットの力によって不正が容易に暴かれてしまう事が分かったわけです。しかも五輪という一大イベントですから、多くのデザイナーがこの事実を知ったはずです。

つまり、今後安易に盗用するデザイナーが確実に減るということなんですよね。これは消費者にとって望ましい事ですし、スタッフを抱える立場の佐野氏としてもプラスになるわけです。そういった点で今回の騒動は大きな功績を残したと思います。

あとはこの騒動をきっかけに一般人のデザインに対する理解が深まって、業界全体の待遇が良くなれば文句なしなんですけどね。

佐野氏の名誉を回復させることにも繋がった

今回の佐野氏の声明はある意味佐野氏にとってプラスに働いたと思います。

というのも今までは佐野氏自身が盗用を行っていると疑われていたからです。これでは佐野氏のデザイナーとしてのキャリアに致命的な傷が付きます。しかし、今回の声明によって”佐野氏自身は盗用していない”ことが発覚したわけです。これは責任者としては致命的ですが、デザイナーとしてのキャリアは守られたということになります。

この騒動はあらゆる企業で起こり得る問題

今回の騒動、デザイン業界だけの問題ではないんですよね。人を雇用する以上どこでも起こる問題なんです。特に飲食店やファストフード、コンビニなどでは要注意です。こういった店舗ではまだ精神的に未熟な学生をアルバイトとして雇うわけです。当然、騒動を起こすリスクが高いわけですよね。

明日は我が身ということを肝に銘じて、リスク管理を徹底していく必要があると思います。

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